Saturday, September 22, 2012
紙を見せてください
"Show me your papers."
紙とは書類を意味し、そしてその書類とは、ここでは「滞米資格を証明する書類」を指します。
アリゾナが「不法滞在は州の犯罪だかんね。警察だって逮捕すっかんね」という法案を通したのは2年前のこと。
それに反対する「ちょっと待てよっ!」(懐かしい響き)派の主張は主に二つ。
「移民のアレコレは国がやることだろ。州がそんなことしだしてどうすんだよ」という憲法尊重A派。
(たとえば、仮に他国と戦争になったときに、州だけでは当然対応ができず、つまりは、対外関連=移民関連は連邦の管轄となっています。)
「どうやって不法移民だって見分けんだよ。不法滞在が多いラテン系アメリカ人(アリゾナの場合は主にメキシコ人)を、外見だけで不法滞在だと決めつけるってのが横行すんに決まってんだろ」という人権尊重B派。
そして、ちょっと待てよ各派分派は、アリゾナ州を相手にそれぞれ裁判を起こします。
A派(=連邦、つまり国です)対アリゾナ州が、最高裁への道を歩む中、地裁はB派に対して「まぁ最高裁の判断が出るまで待っててよ」と申し述べます。(要の部分は保留のまま、法案自体は2010年に施行されています。)
その最高裁が判断をくだしたのが、この6月。
最高裁は「連邦の移民関連の管轄権限に州は足を踏み入れることはできない」という判断を下しました。つまり、「不法滞在を州の犯罪とする」という条項は否定されたのです。しかし、冒頭の書類提示条項は、直ちに憲法違反を意味するものではないと判断しました。また、裁判は「移民関連を州が管轄できるか否か」についてであり、「それが人権侵害(につながる)か否か」ではないため、その点についての判断は下していません。
最高裁は、法案の下記3点の重要事項にNOを出し
- 不法滞在はアリゾナ州の犯罪(で、警察が逮捕状無しに逮捕できる)
- 米国滞在外国人の、滞米資格を証明する書類の携帯義務(不携帯には罰金あり)
- 不法移民の就労・労働は州の犯罪(で、警察が逮捕状無しに逮捕できる)
下記1点の重要事項にYESを出しました。
- 合理的な理由に基づき不法滞在だと推測される人物に対して、
(州内の)警察は滞米ステータスの提示を求めることができる
つまり、アリゾナでは、警察が職務上関わった人物が、不法移民であると疑うに足る合理的な理由がある場合、「滞米ステータスを証明する書類を見せてください」と要求することができるようになったのです。(最高裁の判断に則り、地裁も判断。)
職務上というのは、犯罪の容疑者逮捕はもとより、職務質問どころか、交通違反も含まれるわけで、我々日本人も少々心配ではあります。(滞米資格を証明する書類なんてつい携行し忘れるし、そもそも、万が一の盗難・紛失の際にアメリカの実力が発揮され、すぐ再発行なんてしてもらえないような不安もあり、携行しまくりたくありません。)
とは言え、そこがそれ、スムーズにいかないのがアメリカ。
不法滞在か否かの確認は連邦(国)に照会するわけですが、連邦側は「州からの照会に回答は出すが、不法滞在をしている重罪犯・逃亡犯・度重なる不法入国者・不法入国が最近の者以外は、(照会案件に関しては)違法滞在のみを理由としての対応は行わない」と明言しています。
たとえば、仮に不法滞在が疑われた場合でも、彼或いは彼女を不当に長く拘留することはできませんが、連邦からの回答がすぐくるとは限りません。また、不法滞在が疑われる人物が、事件の被害者だったとき、目撃者だったときはどうするのか、なども、問題が残る部分です。
さて、この話題は、移民関連云々で、自身もトラブルに巻き込まれる可能性からのみならず、「州の権利・権限」と「(その州が集まって成り立った、そして成り立つ)連邦の権利・権限」という概念を間近で見ることとなり(=ただ遠くから傍観)、地方自治が憲法でうたわれているものの(ラーララー、と、それは歌)、中央集権的要素を強く感じる、「(都)道府県」と「国」の日本人としては、なかなかに興味深いものでした。
(だって、「不法滞在は州の犯罪とする」と言われたって、最初聞いたときは、いやそもそも違法なわけで、もとから違法でしょ?としか、思いませんでしたよ。)
*滞米資格無しの滞在、また就労・労働は、連邦レベルで違法です。
*連邦規則にも「滞米ステータスを証明する書類の携行義務」は存在しています。
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Arizona
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